【最高導師】
「それでは後は任せたぞ」
【ミリネ】
「はい、承知いたしました」
互いに簡単な自己紹介を終えたのを見届け、
後の案内をナギに任せると、最高導師はその場から去っていった。
【ナギ】
「それではミリネさん。
これから聖務院の中を案内させていただきますわ。よろしいかしら?」
【ミリネ】
「は、はい!よろしくお願いします!!
え、ええと……ナギさん?
ああっ!?貴族の方に『さん』なんて失礼ですよね!?
ナギ様?いやいや、エウノエ様?」
――村人全員が顔見知り。
そんな狭い世界しか知らないミリネにとって、
ナギは今までの自分の価値観を崩してくるような存在であった。
一目見ただけで、おしとやかで、優雅で、気品に溢れているのが伝わってくる。
そして、目を引くほどの絶世の美少女。
さらには国でも一、二を争うほどの名門の家柄ときたものだ。
本来なら一介の村娘が話しかけていい存在ではない。
存在の格が違う。生きる世界が違う。
人の上に立つ人間とはこういった者なのだなと、ミリネはこの短い間に理解する。
【ナギ】
「フフフ。そんなに緊張しないでください」
【ナギ】
「この聖務院では身分差など関係ありません。
わたくしたちは皆等しく女神様に仕える巫女候補です。
ですから、気兼ねなく話しかけてくださいね」
【ミリネ】
「あ……そうか……そうですよね!
私たちは巫女候補……同じ巫女の座を競うライバルですもんね!」
【ミリネ】
(そうだよ、私が女神様の巫女になるためには、
ナギさんを超えなきゃいけないんだ……!
今の自分じゃ難しくても、いつか必ず……!)
【ミリネ】
「私、負けません!
絶対ナギさんに勝って女神様の巫女になってみせます!」
今は無理でも、いつかきっと――
【ナギ】
「あら。……フフ。楽しみにしておりますわ」
ミリネの言葉に目を見開いて驚きの表情を浮かべたナギ。
だが、それも一瞬。彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。
【ナギ】
「そうですわね。でしたら、お互い敬語はやめにしましょうか。
ライバル同士が敬語で話すのもおかしな話ですものね?」
【ミリネ】
「……うん!そうだね、ナギちゃん!」
ものの数分で打ち解けたナギとミリネ。
生まれも何もかもが異なる二人であったが、
互いに女神への信仰心だけは同じであった……
………………
…………
……
【ミリネ】
「あ、お部屋がいっぱいある。……ここは何なの?」
他愛もない話を交えながら、院内の案内を受けるミリネ。
次に彼女の目に止まったのは、小さな個室が並んでいる建物であった。
【ナギ】
「ここは修練の場ですわ。
巫女として最も大事な女神様との接続を高めるために神性を鍛える場所ですの。
ほら、レプリカですけれど神像もありますから、聖印の儀の訓練もできますのよ」
【ミリネ】
「せつぞく?しんせー?せーいんのぎ???」
個室が並ぶ中から、そのひとつに案内しながら話すナギ。
だが、彼女の言葉は専門用語が多すぎてチンプンカンプンであった。
部屋の中身は小さなベッドがひとつと、細々としたものがあるだけで、
修練の場というよりも、仮眠室と言われたほうがしっくりくる様子。
一体どんな修練をするのか見当もつかない。
【ミリネ】
「そもそも、どうして修練の場にベッドが必要なの??」
【ナギ】
「あら、ごめんなさい。ちょっと分かりにくかったかしら。
そうですわね、分かりやすく言うのなら……ええと、そう!
自慰の練習場ですわ!」
【ミリネ】
「じい?」
その言葉からも、女神の巫女になるための修練という行動は想像もつかず、
真顔でオウム返しするミリネ。
【ナギ】
「え、ええと、う〜〜もう!
つまり、一人エッチ!オナニーのことですわ!」
【ミリネ】
「あー、一人エッチ。オナニーね。うんうん、それなら私も分かるよ」
【ミリネ】
「って、ええええええええっ!?ひ、一人エッチの練習ううううぅ!?」
この神聖な場にあるまじき言葉を放ったナギに、驚きの声を上げるミリネ。
その目は冗談を言っているようではなかった。
思わずその個室を見渡すと、ベッドの横には、潤滑油やら棒状の突起物やら、
女性の体を慰めるための道具が、所狭しと鎮座していることに気づく。
【ミリネ】
「女神様の巫女の修行が一人エッチってどういうことなの〜〜〜!?」
神聖さが漂っていたその空間が、一気に桃色の空間に感じてしまう。
そんな狭い部屋の中で、彼女の混乱の声が響き渡るのであった……
………………
…………
……
≪続く≫